『地球優位主義』表紙。森や動物、滝をたたえた大きな手が、煙を上げる工業都市と朝日の間にそびえる絵

あなたが今この瞬間吸っている空気に、
値段はついているだろうか。

地球優位主義

人間の英知で、地球と共に生きるために

ココロ・シャンカ 著

なぜ、この本なのか

私たちは、受け取っているものの大きさに気づいていない

清潔な空気、蛇口から出る水、予測できる季節。あまりに当たり前すぎて、私たちはそれを「存在していないも同然」に扱ってきました。

約33兆ドル/年

地球の生態系が人間に無償で提供している価値の試算。当時の世界GNPの約二倍。
(コスタンザら、1997年)

1.5度超

2023〜2025年の三年平均で、産業革命前からの気温上昇が初めて1.5度を超えた。単年では2024年に約1.55度、翌2025年は約1.43度。

約17%

SDGsの169のターゲットのうち、順調に進んでいるものの割合。
(国連「持続可能な開発目標報告2024」)

数字を並べると、人は無力感を覚えます。しかし本書は、その無力感は状況の正確な理解からではなく、状況の規模に対する錯覚から生まれていると指摘します。

誠実な取り組みは世界中で続いています。それでも地球の状態は、多くの指標でむしろ悪化しています。問題の根は、特定の政策や制度ではなく、文明の前提そのものにある。本書はそこから問い直します。

本書が提案すること

判断の順序を、入れ替える

これまで

人間の都合を優先したうえで、
地球を守る

地球優位主義

地球の存続条件を前提に、
人間の豊かさを設計する

順序の違いは小さく見えて、あらゆる判断の根拠を変えます。本書はこの転換を「地球優位主義」と呼び、人間の歴史、地球の現在、心理、権利と責任、制度、お金、文化の各側面から、その意味と、すでに始まっている兆しをたどります。それは答えの体系ではなく、次の三つからなる問いの姿勢です。

基準に置く地球を判断の基準に置く
認める受け取ってきたものを認める
返す返すことを自ら選ぶ

こんな方に

この本を読んでほしい人

  • 気候変動のニュースに、「自分が何をしても変わらない」と感じている
  • SDGsや環境の取り組みに関わっているが、手応えのなさを感じている
  • 「わかっているのに変われない」理由を、心理や社会の仕組みから知りたい
  • 経済、制度、お金の視点から、地球との関係を考え直したい
  • これからの時代を生きる指針になる「問い」を探している

試し読み

序章 あなたはすでに受け取っている

序-1 あなたが今この瞬間吸っている空気に、値段はついているだろうか

清潔な空気は今日もそこにある。水道の蛇口をひねれば水が出る。季節はおおむね予測できる範囲で巡り、土の上では作物が育つ。これらはあまりにも当然のこととして、私たちの意識の外側に置かれてきた。値段がついていないものは、存在していないも同然に扱われる。人間の社会とはそういうものである。

しかし考えてみれば、空気に値段がついていないことほど不思議なことはない。

経済学者ロバート・コスタンザらの研究チームは1997年、地球の生態系が人間に対して提供する「サービス」の経済的価値を試算した。森林による水の浄化、土壌の形成、花粉媒介、気候の調整、海洋による炭素吸収。これらを市場で取引可能な価格に換算すると、年間約33兆ドルにのぼると見積もられた。これは当時の世界のGNPの約二倍に相当する。地球は無償で、人間の経済全体を支えるだけの価値を毎年提供し続けている。にもかかわらず、その価値は経済の計算式の中に正式に組み込まれることがほとんどない。

無償で受け取れるものを、人間は当然と考える。当然と考えるものを、人間は守ろうとしない。

― 続きは本書で ―

目次

全八章と、終章へ続く問い

各章をクリックすると、節の見出しが開きます。

序章あなたはすでに受け取っている
  • 序-1 あなたが今この瞬間吸っている空気に、値段はついているだろうか
  • 序-2 なぜSDGsでは、足りないのか
  • 序-3 あなたはなぜ、変われないのか
第一章母なる地球をいつから支配できるものと考え始めたのか
  • 1-1 火を使った日から始まった長い話
  • 1-2 与えられた権利を、奪う権利に変えたのはいつか
  • 1-3 「進歩」という名の前借りについて
第二章地球は今、何を語っているのか
  • 2-1 沈黙する地球が発する数字という言葉
  • 2-2 核という人類最大の宿題
  • 2-3 地球の限界を前に人間は変わることができるのか
第三章なぜ、わかっていても変われないのか
  • 3-1 人間の脳は、地球規模の問題が苦手である
  • 3-2 正しい思想が、五十年間効かなかった理由
  • 3-3 それでも人間は、変わってきた
第四章権利と責任は、等価である
  • 4-1 あなたの権利は、どこから来たのか
  • 4-2 責任のない権利が向かう先
  • 4-3 連帯責任という、逃れられない問い
第五章地球が基盤の世界では、何が見えてくるのか
  • 5-1 人間中心から地球基準へ、という転換
  • 5-2 三つの道と、一つの問い
  • 5-3 これは犠牲ではなく、返済ではないか
第六章人間が作った制度の中に地球をどのようにして取り戻すか
  • 6-1 かつて制度は、地球と話していた
  • 6-2 人間の制度はなぜ、目先のことしか見えないのか
  • 6-3 地球の声を、制度に組み込む試み
  • 6-4 合意が結ばれていく過程
第七章お金を、地球に返す方法があるとしたら
  • 7-1 お金は、もともと地球から生まれた
  • 7-2 なぜ経済成長は、地球を壊すのか
  • 7-3 地球の回復が、利益になる経済
第八章英知の向きが、変わるとき
  • 8-1 文化が変わると、人間が変わる
  • 8-2 英知は地球から生まれ、地球へ返る
  • 8-3 すでに始まっている、静かな転換
終章あなたは、何を返すのか
  • 終-1 問題を作ったのも、解けるのも人間である
  • 終-2 あなたはすでに受け取っている
 あとがき

著者からのメッセージ

ココロ・シャンカ

この本のことを、長年考え続けてきた。最初は明確な思想ではなかった。地球と人間の関係について、何かが根本的にずれているという感覚だけがあった。

希望は楽観ではない。事実の中に、すでに静かに存在している兆しを、見つけ出すことである。

読者一人ひとりが、自分の場所で、自分の言葉で、この問いを引き受け直してほしい。問いが変われば、行動が変わる。行動が変われば、世界が変わる。

― あとがきより

書籍情報

地球優位主義

書名地球優位主義
副題人間の英知で、地球と共に生きるために
著者ココロ・シャンカ
構成序章・全八章・終章・あとがき
英語版Earth Primacy: Living with the Earth Through Human Wisdom

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あなたは、何を返すのか。

地球はまだ、回復できる。人間はまだ、変われる。